日本一海に近い学校の 一人だけのすてきな卒業式

2024年3月25日 18時10分

 3月22日(金)。日本一海に近い学校の卒業式が行われました。
卒業生は、ただ一人。
すてきすぎる卒業式でした。式辞を紹介します。

 「夕方に水切り肌寒妹と」。
 これは、一月の愛媛新聞俳句キッズに載ったK君の作品です。目の前には、ふるさとの宇和海が果てしなく広がっています。

  先ほど、卒業証書を受け取るK君の凜とした態度と瞳の力強さに心が震えました。一人だけの卒業式。来年、令和7年に大久小学校は150周年を迎えますが、その長い歴史の中でも、初めてのことでしょう。

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 この6年間、同級生がいたときもありましたが、ほとんどは一人だけでした。同級生がいない寂しさや不安はたくさんあったことでしょう。でも、六年生となったこの一年は、一人で下級生のためにも頑張りました。どれほど好かれ、頼りにされていたかは、この後のお別れの言葉で、下級生たちから伝えてもらえます。

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 さて、絵本や映画にもなった「えんとつ町のプペル」はよく知られています。町内には、プペルバスが何度も来てくれましたし、「こどもギフト」という取組で、本校の子どもたち全員が絵本のプレゼントもいただきました。

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 ぶ厚い煙に覆われた「えんとつ町」。煙の向こうに「星」があるなんて誰も思っていません。だから上を向く人なんていませんでした。この煙は、まるでコロナが流行ったときの社会の様子に似ていたり、様々な不安で踏み出すことができない多くの人の心に似ていたりします。

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 主人公のルビッチと自分を重ねてみてください。

 ルビッチのお父さんは、そのぶ厚い煙の向こうに空が広がり、星が輝く世界があるとみんなに伝えました。でも町の人々は、空も星も見たことがないから嘘つき呼ばわりしました。ルビッチは、お父さんの言葉を信じ、星を見つけるためにいつも見上げていました。だから友達はいませんでしたが、ゴミでできたプペルと出会いました。町の人は化け物だと恐れましたが、二人は友達になりました。

 ルビッチは、どんなに笑われてもバカにされても自分を信じ続けます。夢を忘れないように、足が震えながらも煙突の上に何度も登り続けました。また、ゴミ人間のプペルを家に招き入れ、自分の偏見ある考えをも洗い流すように、何度も体をきれいにしてあげました。

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 目に見えるものを信じることは、誰にだってできます。でもルビッチが強いのは、煙に覆われて見えない空に、輝く星があることを信じていることです。また、ゴミに覆われて見えないプペルの中に、きれいな心を感じていることです。

 下を見ず、顔を上げて上を向きましょう。自分を信じて挑戦しましょう。そうすれば、未来はきっと変わります。
私たちは、K君の未来をずっと応援しています。

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 大久小学校の校章には、桜がデザインされています。一年半前の秋、大和ハウス工業様との桜プロジェクトで奈良県吉野の山桜をみんなで植樹しました。また先週、K君は、愛媛森林基金でいただいたハナミズキを一人で植えました。ハナミズキの花言葉は、「ずっと続きますように」です。将来、いつでもここに帰って来て、大久小学校の思い出を、桜やハナミズキとともに振り返ってください。

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 保護者のK様、本日は誠におめでとうございます。K君は、御家庭の宝であり、学校や地域の宝でもあります。今後のさらなる成長と活躍を職員一同、心から願っております。

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 最後になりましたが、伊方町副町長濱松一良様、伊方町教育委員藤川美喜様をはじめ来賓の皆様におかれましては、御多用の中、御臨席を賜り、誠にありがとうございました。今後も地域の皆様と手を取り合って、子どもたちを見まもり、応援してまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、大久小学校の全ての子どもたちが、「あかるく、やさしく、たくましく」成長することを祈念しまして、式辞といたします。

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